自炊というサバイバル
私は現在、貧困に苦しんでいる。そして、貧困というのは、飢えに直結する。飢えは非常に恐ろしいものだ。人を狂わせる・・・・
現在の生活について
私の生活の状況を簡単に紹介しよう。
まず、私の家には基本的に家電が少ない。洗濯機はあるが、冷蔵庫、レンジがない。フライパンもないので、食事を作ることはおろか、食べる回数も自然と減ってきた。食材も買う金もないので、当然といえば当然の結果である。ベッドも枕もないので、クッションに頭を乗せて、カーペットで寝ている。フローリングに比べれば、カーペットの弾力は凄まじいものだ。
そんな中、「自炊をしないのか？節約になる」という声をよく聞く。おもしれぇ、やってやろうじゃん。
キッチン紹介
我が家のキッチンを紹介しよう。こちらである。
写真がぶれているのは、スマホのカメラが壊れているからだ。決して震えが止まらない訳ではない。生活感あふれる惨状をお見せするのは、忍びないが、今回は赤裸々にいこうと思う。
散らかり切った中にも、凝視すれば、わさびチューブなど、食べれるものもある。しかし、ほとんどは作業用のスペースとして使っている。机のない我が家で、程よい高さを求めた結果だ。合理化の進む現代社会の波は、無職の私にも押し寄せてきている。貴重な家電の一つである給湯器は重宝している。鍋がないので、調理には向かないが、それでも白湯が飲めるのは、生活に花があって良い。よって、キッチンでの作業は基本的にできない。
自炊をするためのスペースを求めることから、私の調理は始まった。
最強の調理場・シャワールーム！
6畳ワンルームの空間を東西南北に駆け巡り、ついに私は見つけた。Kebvハイツのオアシス、シャワールームだ。風呂場なので当然水がある。むしろ、安上がりに済ませた水道からは、人体を焼き尽くさんばかりの熱湯が出る。浴槽は巨大なシンクも同義。一体、このサイズのキッチンスペースにいくらかかるのだろうか？短なものでも、見方を変えれば一流になる。私は改めて自身の可能性を感じるのであった。
いざ、調理！
少ない貯金を叩いて、近所のスーパーで食材を調達。日頃、電気を使わない私にとって、スーパーの灯りは異常なほど白く、食材たちの匂いは強烈な誘惑であった。
さすがに、食材は洗うべきだと友人が言うので、満を持して巨大シンクに食材をぶち込み、ご自慢の熱湯シャワーで洗礼を浴びせる。見よ、このじゃがいもを！
目の悪い私は、風呂場に馬糞が転がっているのかとも思ったが、見事な芋ではないか！美味そうだ。生でかじってみると、シャキシャキとした食感の中にかろうじてジャガイモの風味。火を通すことの意味を知った。27歳の春である。
ちなみに、小松菜は生でもそれなりに行けた。
加熱調理へ！
かつての神話では、プロメテウスという巨人が人類に火を渡したとされている。人は偉大だ。火がもたらす恩恵は、筆舌し難いものだ。古代の人間たちは、火を恐れながらも、その恵みに感謝もしていた。だからこそ、火は神のものであったのだ。現代社会では、そのことは忘れられている。ガス管は町中を走り、コンビニには炭火焼きと書かれたチキンが無造作に置かれている。火とは日常であり、人間が扱うものになってしまった・・・嘆かわしい・・・
前置きが長くなったが、結論からいうと、私も加熱調理に挑んだ。
画像では分かりにくいが、蝋燭の火で皿ごと加熱している。到底、一般家庭の風呂場とは思えない惨状だ。万が一、住所が特定され、大家に告げ口をされようものなら、修繕工事を要求されかねない。まさしく火の車だ！全く笑えない・・・
実食！
食べてみると、どうだろうか。表面はかろうじて火が通っているが、中は生だ。外ホクホク、中シャキシャキの新食感は、今までの人生が恵まれていたことを教えてくれる。友人がくれた一本39円のダイエットコーラで流し込めば、腹は膨れる。味などは二の次なのだ。
蝋燭の燻った煙が、目に沁みる。だがもう、涙は枯れている・・・
結論
文明の力は偉大だ。私はもう疲れた。生の食材をかじり、風呂場を灰と泥で汚し、一体どうなっちゃったのよ・・・・
こういう時に即座に行動し、自身の失敗を取り返すことが大人というものだ。私ももう27だ。そのくらいの分別はついている。後始末をするということは、責任をしっかりと負うということだ。疲労しきった肉体は、異常な負荷のかかった胃袋を支えるには心許ない。しかし、それでも・・・と残りの精神力を振り絞って、私は近所のコンビニへタバコを吸いに行くのだった。
